シャンソン『リラの花咲く頃』と『すみれの花咲く頃』

  • 2019.04.12 Friday
  • 19:25
春の歌シリーズ、今回はリラ(ライラック)の花にまつわるシャンソンとそれの宝塚バージョンすみれの歌を聴いてみよう。まずは『リラの花咲く頃』の原詞、カタカナ読み、ぼくの訳の順で挙げる。

  Quand refleuriront les lilas blancs

       Paroles:Lelièvre/Varna/Rouvray
       Musique:Franz Dölle

Quand refleuriront les lilas blancs
On se redira des mots troublants
Les femmes conquises
Feront sous l'emprise
Du printemps qui grise
Des bêtises

Quand refleuriront les lilas blancs
On écoutera tous les serments
Car l'amour en fête
Tournera les têtes
Quand refleuriront les lilas blancs

Printemps printemps c'est toi
Qu'on guette dans les bois
Où les amants heureux
Vont s'en aller par deux
C'est toi qui feras se pâmer tendrement
Celle que j'aime éperdument
Printemps j'attends pour la tenir dans mes bras
La complicité des lilas

Quand refleuriront les lilas blancs
On se redira des mots troublants
Les femmes conquises
Feront sous l'emprise
Du printemps qui grise
Des bêtises


Car l'amour en fête
Tournera les têtes
Quand refleuriront les lilas blancs


 コン ルフルリロン レ リラ ブロン

  パロル: ルリエブル/ヴァルナ/ルヴレ
  ミュズィック: フランツ・デレ

コン ルフルリロン レ リラ ブロン
オン ス ルディラ デ モ トゥルブロン
レ ファム コンキーゼ
フロン ス ロンプリーゼ
デュ プランタン キ グリーゼ
デ ベティーゼ

コン ルフルリロン レ リラ ブロン
オ ネクテラ トゥ レ セルモン
カル ラムー ロン フェット
トゥルネラ レ テット
コン ルフルリロン レ リラ ブロン

プランタン プランタン セ トワ
コン ゲット ドン レ ボワ
ウ レ ザモン ズルー
ヴォン サン ナレー パル ドゥ
セ トワ キ フェラ ス パメール トンドゥルモン
セル ク ジェ マペルドュモン
プランタン ジャトン プール ラ トゥニール ドン メ ブラ
ラ コンプリスィテ デ リラ

コン ルフルリロン レ リラ ブロン
オン ス ルディラ デ モ トゥルブロン
レ ファム コンキーゼ
フロン ス ランプリーゼ
デュ プランタン キ グリーゼ
デ ベティーゼ

カル ラムー ロン フェット
トゥルネラ レ テット
コン ルフルリロン レ リラ ブロン


  リラの花咲く頃

   詞:ルリエブル/ヴァルナ/ルヴレ
   曲:フランツ・デレ

白いリラの花咲く頃
心惑わせる言葉が行き交う
その一つに魅了された女が
人を酔わせる春に
そそのかされて
ばかなことをしてしまう

白いリラの花咲く頃
聞こえるのは愛の誓いばかり
それは浮かれた恋心が
人の頭を狂わせるからだ
白いリラの花咲く頃

春よ春、みんなが森の中で
待ち焦がれているのはおまえ
そこでは幸せな恋人たちが
二人で仲良く散歩する
ぼくが夢中で愛している娘を
うっとりさせるのが春よお前だ
春よぼくはリラの助けを待っている
彼女をこの腕に抱くために

白いリラの花咲く頃
心惑わせる言葉が行き交う
その一つに魅了された女が
人を酔わせる春に
そそのかされて
ばかなことをしてしまう

それは浮かれた恋心が
頭を狂わせるからだ
白いリラの花咲く頃
   
      (訳:船津 建)

創唱者ではないがこれを持ち歌にしているクリスチャン・ボレル(Christian Borel)の歌唱で聴いてみよう。



この歌は一般にポピュラーなシャンソンの名曲として知られているが、メロディーに比べて原詞の内容はあまり知られていないのではないだろうか。春を待ち焦がれる歌とは言っても、これはあまりに軽薄な内容ではないか。親しみやすいメロディーにのせてフランス語で歌われるからいいようなものの、フランス語のネイティブはどのように感じるのだろう。
歌詞については解説の必要がないので、この歌の誕生の背景を探ってみた。1929年にフランス語の歌詞が三人の手で付けられたが、元歌はその前年ドイツで誕生した流行歌(シュラーガー Schlager)だったのだ。次にその原詞とぼくの訳を紹介しよう。

   Wenn der weiße Flieder wieder blüht

Frühling, Frühling, Frühling, wer dich liebt wie ich.
Frühling, Frühling, Frühling, voll Glück erwart' ich dich!
Oh schein in mein Stübchen recht bald nur hinein,
mein Schatz hat schon Sehnsucht nach dir!
Er sagt: Ich brauch' Sonne um glücklich zu sein,
dann wünsche dir alles von mir.

Wenn der weiße Flieder wieder blüht,
sing' ich dir mein schönstes Liebeslied.
Immer, immer wieder knie ich vor dir nieder,
trink mit dir den Duft vom weißen Flieder.
Wenn der weiße Flieder wieder blüht,
küss' ich deine roten Lippen müd'.
Wie im Land der Märchen werden wir ein Pärchen
wenn der weiße Flieder wieder blüht.

Liebling, Liebling, Liebling, zieht erst der Lenz ins Land
Liebling, Liebling, Liebling, dann werden wir verwandt
Der Lenz ist der Priester, der uns zwei vereint
Die Sonne ist unser Altar
Wenn sie uns mit goldenen Strahlen bescheint
Dann sind wir das glücklichste Paar

Wenn der weiße Flieder wieder blüht,
sing' ich dir mein schönstes Liebeslied.
Immer, immer wieder knie ich vor dir nieder,
trink mit dir den Duft vom weißen Flieder.
Wenn der weiße Flieder wieder blüht,
küss' ich deine roten Lippen müd'.
Wie im Land der Märchen werden wir ein Pärchen
wenn der weiße Flieder wieder blüht.



     白いリラのまた咲く頃

春よ、春、春、私ほどおまえを好きな者はない。
春よ、春、春、幸せに満ちて私はおまえを待つ!
早くぼくの部屋の中にも入って来ておくれ、
ぼくの恋人がおまえを待ちわびているのだよ!
お日さまなしでは幸せな気持ちになれないわ、
お願いだから頼みを聞いて、と言いながら。

白いリラのまた咲く頃、
ぼくはきみに美しい愛の歌を歌ってあげる、
なんどもきみの前にひざまずき、
きみと一緒に白いリラの香りをかごう。
白いリラのまた咲く頃、
ぼくはきみの赤い唇に思い切り口づけよう。
おとぎの国にいるようにぼくらはカップルになる、
白いリラのまた咲く頃。

ああ、愛しい人よ、春がこのまちにやって来たら
ああ、愛しい人よ、ぼくらはやっと親しくなれる。
春はぼくらを結び合わせてくれる司祭さまだ。
お日さまはぼくらの祭壇だ、
ぼくらを金色の光で照らしてくれるとき
ぼくらは最高に幸せなカップルになるのだ。

白いリラのまた咲く頃、
ぼくはきみに美しい愛の歌を歌ってあげる、
なんどもきみの前にひざまずき、
きみと一緒に白いリラの香りをかごう。
白いリラのまた咲く頃、
ぼくはきみの赤い唇に思い切り口づけよう。
おとぎの国にいるようにぼくらはカップルになる、
白いリラのまた咲く頃。

               (訳:船津 建)

芽生えや開花が恋と重ね合わされている点はドイツ語、フランス語の歌詞とも共通しているものの、味わいがいかにも国民性の違いを反映しているようで面白い。この歌は誕生から四半世紀のちの1953年に同名のドイツ映画の主題歌としてリバイバルした。



この映像は映画の一場面だが、1953年に公開されたこの作品はテレビでもたびたび放映され、ドイツでは知名度が高い。それというのも戦前の無声映画時代から戦後にかけてドイツ映画界の歌えるスターだったヴィリー・フリッチュ(Willy Fritsch 『会議は踊る』など)主演であるのと、戦後のドイツ・フランス映画界のスターだったロミー・シュナイダー(Romy Schneider)のデビュー作(14歳)だったからだろう。ストーリー自体は一種のメロドラマだが、ヴィリ―の歌う主題歌の魅力も相まって2008年にはDVD化されたほどだ。ロミー・シュナイダーはぼくの好きな女優の一人で、ウィーン生まれのせいもあって最初はオーストリア・ハプスブルク家の皇妃エリーザベトの若き日シシー(Sissi)を演じた三部作などでアイドル的人気を博したが、後にはイタリアのルキノ・ヴィスコンティ監督作品『ルートヴィヒ』(1972年)やフランス映画の秀作『離愁(原題:列車 Le Train)』(1973年)などで陰影のある人物を好演した。

このメロディーを聴けば誰しも宝塚少女歌劇のテーマソングとも言える『すみれの花咲く頃』だと気がつくだろう。こちらは何とフランス語の歌の誕生の2年後にはもう日本で歌われたのだ。それというのも戦前から戦後にかけて宝塚レビューの王さまと呼ばれた白井鐡造が1928年にちょうどパリ遊学中で、この歌を持ち帰り自ら作詞して1930年の月組公演『パリゼット』に使ったからだ。それが日本で大ヒットし、その後90年間も宝塚を象徴する歌として生き続けているのだから歌の運命と言うのは何とも不思議かつ興味深いものだ。では次に白井鐡造の訳詩(というより作詞)による宝塚少女歌劇月組公演での歌唱の場面を楽しんでもらおう。

すみれの花咲く頃

*すみれの花咲く頃
はじめて君を知りぬ
君を思い日ごと夜ごと
悩みしあの日の頃
すみれの花咲く頃
今も心奮(ふる)う
忘れな君我らの恋
すみれの花咲く頃

春すみれ咲き春を告げる
春何ゆえ人は汝(なれ)を待つ
楽しく悩ましき春の夢甘き恋
人の心酔わすそは汝
すみれ咲く春 *リフレイン
    
     (詞:白井鐡蔵)



月組と言えば史上最短のスピードでトップに立った天海祐希を思いだすが、この映像は彼女のファンにはたまらないものだろう。かく言うぼくも彼女のファンだ。とは言っても宝塚には中学の修学旅行で一度行っただけなので、もっぱら彼女が女優になってからの映画やテレビドラマを通してのファンということだ。しかし思えばわが中学校の修学旅行は不思議なコースを回ったものだった。山奥の僻地にあったのでひとつの学校だけだと学年1クラス30名しかいない。そこで町内4つの中学が合同で関西方面への二泊三日の修学旅行に出かけるのが恒例だった。60年近く昔の話だが。お決まりの神社仏閣巡りはもちろんあったが、こんな短かい日程で宝塚少女歌劇を見たり、京都の宿には芸子さんが呼ばれたり、不思議な企画内容だった。宝塚は一番遠い席だったし、芸子さんはいかにも「こんな田舎っぺの中学生の前に立たされるなんて」とでも言いたげな不機嫌な顔だったのでどちらも楽しむどころではなかった。今思えば先生たちが楽しむための企画だったのではないだろうか。
最後にその天海祐希が練習生だった頃のお宝映像というのがYouTubeで見つかったので紹介しよう。



笹川氏は親のいない子どもたちに向かって「人間生まれるときも死ぬときもひとり」と慰め励ましているつもりらしいが、問題は生まれた後ひとりで生きざるをえないことなのではないだろうか。もしかすると競艇で崩壊した家庭の子もいるかもしれない。笹川氏は競艇場内や自分がプールを寄付した学校の構内に、薪を背負った二宮尊徳像ならぬ母を背負った自分の銅像を建てているが、この子たちには背負うべき母もいないのだ。市役所の「お偉方」を紹介しながら、「あなたがたも日本一、世界一の立派な人になれ」と言っている笹川氏を見つめる天海祐希の表情を見たとき、ぼくはなぜ彼女が好きなのか自分でよく分かった。

最後に時を接して作詞された独・仏・日の歌詞の内容を比べてみると日本語のものがいちばんメロディーと合っているような気がしてくる。リラをすみれに変えているがそれも巧みだ。日本文学史には「星菫派(せいきんは)」という星やすみれに託して恋心を歌うロマン派の一派があったがまさにその内容の詞になっている。フランス語歌詞は軟派だし、ドイツ語歌詞は理屈っぽい、情緒的で何やら実体のよく分からない日本語歌詞がメロディーとあいまって独特の味わいを醸し出しているのではないだろうか。




コメント
懐かしい歌を聞くことができました。
メロディーがとてもやさいく美しいですね。
  • コスモス
  • 2019/04/18 4:26 PM
コスモスさん、住んでいる地域の公民館で2年間『文学散歩 歌に見る歴史と文化』と題する講座をしました。ストックがたっぷりできたので、これからどしどしアップします。お楽しみに!
  • heinrich
  • 2019/04/19 6:44 AM
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