韓国の歌『恋、その孤独について』

  • 2020.07.01 Wednesday
  • 22:25
今日は1991年に『1991』というタイトルでリリースされたアルバムの中の『恋、その孤独について』という曲を聴いてみよう。

사랑 그 쓸쓸함에 대하여

     작사:양희은
     작곡:이병우

다시 또 누군가를 만나서
사랑을 하게 될 수 있을까
그럴 수 는 없을 것 같아
도무지 알 수 없는 한 가지
사람을 사랑하게 되는 일
참 쓸쓸한 일인 것 같아
사랑이 끝나고 난 뒤에는
이 세상도 끝나고
날 위해 빛나던 모든 것도
그 빛을 잃어버려

누구나 사는 동안에 한번
잊지 못할 사랑을 만나고
잊지 못할 이별도 하지
도무지 알 수 없는 한 가지
사람을 사랑한다는 그일
참 쓸쓸한 일인 것 같아


サラン ク スルスラメ テーハヨ

     チャクサ:ヤン・ヒウン
     チャッコク:イ・ビョンウ

タシ トー ヌグンガルル マンナソ
サランウル ハゲトゥエル ス イッスルカ
クロル ス ヌン オープスル コ カッタ
トムジ アル ス オームヌン ハン ガジ
サラムル サランハゲ トゥエヌン イル
チャム スルスラン イリン ゴ カッタ
イ セーサンド クンナゴ
ナル ウイヘ ピンナドン モードゥン ゴット
ク ピッチュル イロボリョ

ヌグナ サヌン ドンアネ ハンボン
イッチ モッタル サランウル マンナゴ
イッチ モッタル イビョルド ハジ
トムジ アル ス オームヌン ハン ガジ
サラムル サランハンダヌン ク イル
チャム スルスラン イリン ゴ カッタ


 恋、その孤独について

   作詞:ヤン・ヒウン
   作曲:イ・ビョンウ

ふたたびまた誰かに出逢い
恋をすることがあるだろうか
そんなことはありそうもない
およそ知りようのないこと
人を愛するようになるのは
本当に寂しいことだと思う
恋が終わってしまった後には
この世も終わって
私のために輝いていたすべても
その輝きを失ってしまう

誰でも生きている間に一度は
忘れられない恋に出逢い
忘れられない別れも迎える
およそ知りようのないこと
人を愛するというそのことは
本当に寂しいことだと思う

      (訳:船津 建)

これは珍しいきっかけで生まれた歌だ。1971年、19歳の歳に『朝露』(아침 이슬)という曲で鮮烈なデビューを果たし、1991年にはすでに押しも押されもせぬ大歌手になっていたヤン・ヒウン(揚姫銀)が、デビュー20周年を記念して、当時まったく無名だったギタリストと合作したアルバムの収録曲なのだ。ヤン・ヒウンはその頃悪性卵巣腫瘍の闘病中であり、一時韓国を離れてアメリカに滞在していた。イ・ビョンウは国立ウィーン音大に留学中の貧乏学生、ヤン・ヒウンは彼をニューヨークに呼び寄せ部屋に閉じこもって一日で完成させたというエピソードが語り伝えられている。まずそのイ・ビョンウのギター伴奏でヤン・ヒウンの歌唱を聴いてみよう。



このアルバムは最初制作者もそっぽを向いたそうだが、発売後5,6年たってテレビドラマで使われてから人気が出始め、今では韓国内はもちろん外国でも続々とカバーされるほどになった。ヤン・ヒウンのアルバムとしては今やファーストアルバムと並んで韓国大衆音楽百大名盤に数えられている。
ヤン・ヒウンのデビュー曲『朝露』は民衆歌謡と呼ばれるが、それはピート・シーガーに始まるアメリカのフォークソングに似て政治的なメッセージ性を有するものとみなされ軍事独裁政権下では禁止曲に指定されていた。ソウルオリンピックの前年1987年にやっと解禁されたのだが、この歌についてもいずれ取り上げるつもりだ。『朝露』はキム・ミンギ(김민기 金民基)作詞作曲だが、この『恋、その孤独について』の方は歌手ヤン・ヒウン自身の作詞ということで、両者の世界はずいぶん異なっている。こちらはバラードというジャンルに入るだろう。独白のような飾り気のない言葉がただ口をついて出るままに綴られている。詩として読んだだけでは訴える力はさほど強くなさそうなのに、いったん歌われるとまさしく「寂しさ」が聴く者の胸を打つ。人生の盛りとも言える40歳で作ったというのに、胸の中をすき間風が吹いているような虚無感はどこから来るのだろう。ヤン・ヒウン自身の癌との闘病が作用しているのだろうか。人はしばしばこんな寂しい歌を好む。歌を聴きながら恋のさなかの孤独感や別離の悲しさに深く共感する。しかし人はそのまま虚無に流されるわけではない。「忘れられない恋」「忘れられない別れ」追憶も又生きていく伴侶になる。終わってしまったと思ったこの世はまだ続いている。生きているかぎり生の歓びは尽きない、この歌はそんな逆説的な人生讃歌にも聞こえてくるのだ。

ヤン・ヒウンについてもうひとつ紹介しておきたいことがある。ぼくの住む福岡は韓国に近いせいもあってラジオで簡単に韓国の色んな局の番組が聞ける。勤めている頃カーラジオでよくMBC FMの『女性時代 ヤン・ヒウン、ソ・ギョンソクです』という番組を聞いていた。ヤン・ヒウンは軽快でありながら重厚という独特のパーソナリティの持ち主だと思う。2歳下の妹ヤン・ヒギョンは名脇役としてテレビドラマによく登場するが、姉と同じく歌がうまくミュージカル俳優としても有名だ。面白いのは親しい者でも間違えるほど姉と声が似ているので、姉の代役でラジオに出ても誰も気がつかないというエピソードだ。
作曲のイ・ビョンウ(1965年〜)はクラシック・ギターの名手であると同時に今や映画の音楽監督としても名をはせている。日本でも評判になった『王の男』や『国際市場』を手掛けた。

次に、二人の一世一代のこの合作を、カラヤンに見いだされた世界的なソプラノ歌手チョ・スミ(조수미 捗美 Sumi Jo 1962〜)の演奏で聴いてみよう。こちらはまさにオペラのアリアのような味わいがある。同じ歌が一見ずいぶん違って聞こえるが、美しい歌声の底にただよう虚無感は共通している。



最後にもう一つカバーを聴いてみよう。前の二人とはまた別の味わいの歌唱だ。実力派ハン・ヨンエ(한영애)が歌っているのだが、聴衆の反応がぼくにはとても興味深い。

コメント
「…人を愛するというそのことは、ほんとうに寂しいことだと思う…」
あなたさまの”豊かな感性”はどこから育まれたのでしよう。
韓国に近い福岡に剤集と言うことも何かの縁でしようか。
寂寥感あふれる歌声は心に沁みます。
  • コスモス
  • 2020/07/06 4:23 PM
こすもすさん、
ぼくの感性は(豊かかどうかは分かりませんが)生い立ちが形成したものだと思います。青年期には自覚していませんでしたがこうして人生の終盤を迎えるとつくづくそう感じます。
  • heinrich
  • 2020/07/09 10:04 AM
コメントする








    

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM